障害者の自立支援について考える

障害者の自立支援というと、身構えてしまう人もいるかもしれません。改めて「自立」とはなんでしょうか。私たちは誰しも、一人では生きていけません。社会的に成功している人でも、すべて一人でやり遂げることはほとんど無理に等しく、周囲の人や資源に支えられて成功が成り立っています。

障害者にとって、自立とは、自分のやりたいこと、できることを伸ばすために、必要な支援を組み立てることかもしれません。助けを求めること、福祉情報にアクセスし、制度の網につかまることも、自身の技術や能力を伸ばす上で必要なことなのです。本人を支える家族や地縁などの資源も必要です。

大野更紗著『さらさらさん』に収録された対談の中で、脳性麻痺の障害を持つ小児科医の熊谷さんはこのようなことを言っています。自分で靴下を履けと言われれば、自分でも2時間かければ履ける。でも、そうではなく働かせてほしい。できることとできないことの区別は実はとても難しいものなのだと。

できる、という結果だけ見て、支援しなければ、障害者へのサポートは無いのと同じです。多くの健常者が、難なくやっている生活の動作を、障害者は困難を経てやろうとしているのです。障害者を思うのであれば、そのハードルを取り除き、本人が能力を発揮できる環境づくりをすることが必要です。

障害があれば、必ず誰かの支援を受けなければなりません。サポートが必要なくなることが自立ではありません。むしろ、より多くのサポートが、本人の能力を伸ばす力になるでしょう。

最近は当事者がSNSなどを利用して、情報を発信したりしています。健常者が障害者と分かり合うには、このような情報に普段から興味を持つ人を増やすことが大切だといえます。